何気なく見ていた窓に馴染みのある模様が作られ始める。
あー、やっぱり降ってきたか。傘持ってきてよかった…。
明日と明後日には台風が来るというのはどうやら本当らしい。土日に来てくれるのは助かる。

台風で休講になるのは願ったり叶ったりだが、そのせいでどこかの休日が講義に使われてしまうと考えると台風さんには土日に来ていただくしか無い。
窓の模様はどんどん大きくなっていく。 おー、だいぶ降ってきたな。学校までバス停からは歩いて3分。これは楽勝だ。まぁ、靴位の被害で済みそうだ。と、思ったのだが。
この雨はなんだ、傘から聞こえる雨音がおかしくないか?
どどどどどってなんだよ、待てよ、これ傘の意味ある?バスを降りて3秒でふくらはぎまでやられた。
これは強烈だ。早急に学校へ行き屋根の恩恵を受けねばもれなく全身がこの可哀想な靴と同じ末路をたどることになる。
あぁ、足を踏み出すたびに感じる独特の感触。この感触は割りと嫌いではないのだけれど、楽しんでいる場合でもない。
地面の水が跳ねないように慎重にかつ迅速に学校へ向かう。
学校まで数十メートルになり、太ももまでは濡れていないことに安堵した瞬間、まさかの事態が起こった。
なんてことだ、今日はお弁当を持って来ていないじゃないか、そしてもちろん朝食すらもない。これは一大事だ。
このまま学校へ向かえばこのバケツをひっくり返したような雨からも重たくなったズボンからも解放されるだろう。
しかし、お昼休みまで空腹なまま講義を受け、空腹と闘い続けなければならないなんて。
このままでは俺のお腹が悲鳴をあげてしまう。なんて可哀想な、それだけは避けねばならない、そして避けるためには食料を手に入れるしかない。
ここからコンビニまでは信号を一つ、線路一つを越えなければならないがそのどちらにも引っかかるわけにはいかない。
これは闘いなのである。そうと決まればルートを変更、学校はお預けだ。
きっとHRには間に合わないがそんなことには構っていられない。俺のお腹の方が大事に決まっている。コンビニまであと少し。 学校に着く頃にはこのズボンはきっと太ももまで雨水の侵食を許してしまっているんだろう。
風邪だけは引かないようにしようと心に決め、今はこの状況を楽しもう、凄まじい雨音にどこか安心感を覚えながら朝ごはんはなににしようかと考えていた。


2014/02/14 執筆者:二宮透

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