あー、幸せだった。

「あー、幸せだった」

お昼のたった1時間あまりの休憩時間をイヤホンで音楽を聴きながら読書に当てたクラスメイトが恍惚とした表情で呟いた。
その言葉はあまりにお粗末でなによりも的確だった。
そう、幸せなのだ。
なにものにも邪魔されず自身の趣味に没頭している時間は。

日常生活では避けることの出来ない団体行動。
日本人はこの団体行動が好きらしい。コミュニケーションスキルとやらが割と高いらしい自分はあまりそのことに苦労したことはないが自分で選んだのではない人達との良好な関係を強要されるのは息が詰まる。
だから自分はあのバーチャルの世界に助けを求める。あの狭い枠の中を駆け回り、モンスターをなぎ倒す時間は自分にとって日常で自然で幸せなのだ。

ある時、誰かに聞かれた気がする。
聴かれたのかどうかももう曖昧な記憶だけれど。

「どうしてそんなにゲームが好きなの?何が楽しいの?」

たぶん、こんな類の質問だった。あの時は大した答えが見つからず、ありきたりな答えを返したと思う。
勇者や剣士がかっこいいから……とか、なんとか。
今もそれは変わってない。あいつらのかっこよさは本当にずるい、男でも惚れる。
でも趣味に没頭する理由はそれだけではないことに、

最近気がついた。


2014/02/14 執筆者:二宮透

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